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【イベントレポート】幼稚園・保育園のためのSDGsセミナー 2023


 

2月24日(金)に、シンクアロット主催のオンライン無料セミナー『幼稚園・保育園のためのSDGsセミナー 2023』を開催いたしました。昨年度も大好評をいただいて二度にわたり開催したSDGsセミナーですが、今回も多くの園関係者様にご参加いただきました!本コラムでは内容の一部をご報告いたします。

 

■目次

 

■イベント概要

  わたしたちEN-TRYは、オンライン国際交流プログラム「EN-TRY世界交流」を提供する中で、様々な海外や日本の園、園関係者さまとお付き合いさせて頂いております。園での活動やこどもたちへの想い、教育方針をお伺いする中で、「SDGs」「サステナビリティ」というキーワードを耳にすることがとても増えたように感じておりました。一方で、何をどうやってこどもたちに伝えたら、というお悩みも同時にお伺いすることが多くありました。

 そこで、昨年度は第一弾SDGsセミナー、第二弾の環境編としてオンラインセミナーを開催し、SDGsの解説から幼児保育・教育との関連、そして国内外の取り組み事例をご紹介してきました。

 今回のセミナーでは、さらに多くの園様との交流のなかで見えてきた最新事例をとりあげ、これから始める園様にも参考に、また、すでに取り組まれている園様にもアイデアになりそうな情報をお伝えいたしました。

 分かりやすかった、参考になったとのお声を多く頂戴しております、ありがとうございました!3/12(日)までは見逃し配信を実施しております。本レポートではセミナー内容を一部抜粋してご紹介いたします。



■SDGs×幼稚園・保育園について

 セミナーでは、保育・幼児教育におけるSDGsの概況をご紹介いたしました。今回初めてご参加される方も多くいらっしゃったため、SDGsとは?という基本内容のおさらいから、園に対する期待値について私たちの考えをお伝えいたしました。

 ここでは、幼稚園・保育園などの幼児施設はへの期待について、簡単にまとめました。

 まずは社会の一員として、幼児施設の存在自体が一法人格としてのゴール達成への貢献であるといえます。何か特別な取り組みをしなくても、幼児施設としての役割自体がSDGs達成に向けた取り組みとなっているということです。

 次に、それに加えてこどもたちに対してSDGsに対する学びを提供すること(≒ESD)であると考えています。

 ESDとは、Education for Sustainable Development 「持続可能な開発のための教育」で、ユネスコを主導機関とした取り組みであり、平易にいえば、SDGsを達成する人材づくりの為の教育です。

 ちなみに、弊社の幼稚園・保育園の国際交流プログラムでは、OMEPが主催するグローバルなESDアワードを受賞しております。弊社代表が登壇しておりますアワードの様子は下記画像のリンクよりご覧いただけます。


 そしてセミナーでは、保護者の方々、園関係者の皆様に対するアンケート結果もご紹介しました。こどもたちにSDGsに関心を持ってほしいですか?という問いに関して、保育園・幼稚園のこどもを持つ保護者は75%、園経営者は97%がそう思う、とご回答されています。

 さらに、対象者のみなさま200名以上に、SDGsに関心を持ってほしい理由も選択肢式でお伺いしました。


 最も多かったのは、「多様な人、考えを受け入れられる素地を作ってほしい」で、保護者・園経営者共に60%以上の方が選ばれました。SDGsに関する学びを通して、心の成長を願っている方が多いのではないかと考えております。


 一方で、園経営者のみなさまに、SDGsに関して園での取り組みは十分かどうかをお伺いすると、66%の方が、足りていない、やや足りていない、とご回答されました。

 理由として、時間が足りない、手が回らない、先生たちも勉強が大変である、というコメントをいただき、先生方も悩みながらもさまざまな活動を考え、推進されているのだと感じました。


 今回のレポートでは、セミナーでご紹介した事例の一部と、実施園の先生方からお伺いしたポイントについてご紹介します。身近にあって挑戦できそうなものからなかなか環境によっては難しいものまで幅広い取り組みを紹介しております。取り組みそのものだけではなく、考え方やアイデアから何か持ち帰っていただき、園の活動方針や環境、規模、こどもたちの性格に合わせて実施するためのヒントにしていただけましたらと思います。


■海外園事例紹介

 海外園の事例では、EN-TRY世界交流にご参加いただいている園のうち、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、ケニアの四か国の園の事例をご紹介いたしました。本レポートではシンガポールの例のうち一つをご紹介し、他の三か国については概略をお伝えします。

●シンガポール

Q.

 Dreamkids kindergardenの取り組みです。シンガポールはサステナビリティに国を挙げて注力しており、幼稚園や保育園の活動もプロジェクトとして推進されています。

 こちらの園では「貧困」をテーマとして取り上げ、共感、寛容、分かち合いと言った価値観を育みこと、そして自分自身や身近な環境についてより深く認識することを狙いとした取り組みを実施されました。こどもたちは地域の貧困について調べ、アイデアを検討し、最後にはイラストを描いて、お話を作成したそうです。先生はそれらを主導するのではなく、こどもたちがやりたいと言ったことをサポートする形で進められたそうですよ。


 しかし、「貧困」はこどもたちにとって、植物の保護など物質的な取り組みに比べて難しいように感じます。どうやってこのテーマを先生にすすめたのか、聞いてみました。


Q. どうやって貧困という難しいテーマを進めたのでしょうか?

•まず、こどもたちは自分の視点で物事を見て、解決していくので、正解はありません。私たちの目的は(i)気づきを与えること、(ii)自分の考えや感情を理解すること(iii)視点、問題解決思考など、人生に不可欠なスキルを開発することです。

•第二に、先生の役割は教えることではなく、こどもたちの興味に基づいた学習を促進することです。例えば、大人ば、貧困=「基本的なニーズを維持するためのリソースが不足していること」と定義するかもしれません。しかし、子どもたちの世界では、貧困はお金や食べ物がないことを意味します。子どもたちは、自分たちの考えを理解した上で、地域の状況を調べ、リサーチし、先生は各所に問い合わせるなどして、こどもたちの学習を促進するための資料を集めます。

最後に、カリキュラム成功には、保護者の参加が不可欠ですそのため、私たちが主催するイベントには保護者の方も参加されます。例えば、次回のヤードセールでは、ご家族にブースを出していただき、状態の良いおもちゃや絵本などの中古品を販売します。さらに重要なのは、保護者が学校にとって良い情報源であることです保護者の方々は、子どもたちの学習意欲を高めるために、私たちに地域の資源を紹介してくださることがよくあります。


 先生に「どのように教えたのか」とお伺いすると、「わたしたちは教えたのではない」とおっしゃっていました。気づきを与え、こどもが自発的に考え、動くのをサポートして学習を促進する、ということが先生の役目だそうです。



●オーストラリア

 Ananda Riverside School では、自然に対するリスペクトを身近なものから培うことを狙いに、日常的な森・川へのフィールドワーク、森にある自然物を使ったアート、焚火などを行っているそうです。

 ポイントは、イベントではなく、日常的に行うこと、繰り返すこと。また、焚火の着火など危ないことでも、きちんと指導してこどもたち自身にやらせることだそうです。繰り返し実践することで、経験が価値観の形成や成長に変わっていくと考えられます。


●ニュージーランド

 Aoraki Explorersは、他の多くのニュージーランドの園と同じく、たくさんの文化的背景のこどもたちで構成されています。そこで、園にいる身近なおともだちの背景にある文化を理解し、関心をもつことは大切です。そこで様々な国の文化・価値観を学ぶ、ということを重要視しており、ニュージーランド以外の国や宗教についても、園でちょっとしたイベントを実施しているそうです。

 例えば、チャイニーズニューイヤーなどでは、紙で提灯を創り、それに干支を描いたり、また、中華系の保護者の方を園に読んで、Dumplingsを一緒に作ったりするそうですよ。

 ポイントは、(園の先生では知識に限界があるので)先生で完結しようとせず、各文化の知見者として保護者を巻き込むことで、保護者に相談すれば、とても快く受けてくれることがほとんどとのことです。


●ケニア

 Rusinga Schoolでは、二つの取り組みを実施されています。

 ひとつは、こども主導型のプロジェクト。テーマは宇宙、建物、野生動物、太陽系、等こども次第で自由に決め、野生動物を選んだチームは、保護地区にTripで行ったり、動物にまつわる歌とかダンス、すこし勉強をしたりするそうです。最後に、クラスのみんなにプロジェクト成果を紹介し、学びを深めるともにこどもが達成感を味わうこともできる取り組みです。

 二つ目は、〇〇ウィークとして、集中して特定のテーマについて座学を受ける期間です。環境、ドラッグ防止、森林減少、温暖化、防災、等々の社会課題から日常系まで幅広い簡単な座学が中心です。ドラッグ防止など縁遠いテーマでも、避けずに、「健康」という文脈で危険性を説明するそうです。



■日本園事例紹介

 日本園の事例では、しらおか虹保育園さま、明日葉保育園大倉山園さま、かいけ心正こども園さまの取り組みについて具体的にご紹介し、それぞれの先生方から園でSDGsに取り組むためのポイントをお伝えしました。本レポートでは、しらおか虹保育園さまの取り組みをメインに、他の園の先生方のコメントも一部ご紹介いたします。


●しらおか虹保育園さま

 しらおか虹保育園さまでは、水と、エネルギーについて学びました。

 まずは水について。水不足の問題などを知ったうえで、実際にろ過装置を作ってやって見たそうです。写真の番号を振ってあるコップに、1から4の順にろ過し水が入っています。

 四回ろ過してもまだ濁っているね、大変だね、という実感をもつことができたそうですよ。

 続いてエネルギー。風力発電を模した手作りの風車をもって、風がエネルギーに変わる様子を体験しました。

 エネルギーについては、太陽光についても実験をしたそうです。ペットボトルに黒い紙を巻いて日航にさらしておきます。しばらくしてから温度計で中の水をはかると少し上昇していることが分かりました。手で持ってみても暖かい!と、驚きと楽しみのある取り組みですよね。こどもたちが関心を持ちやすい工夫をすることで、難易度の高いテーマにも触れることができるそうです。


●明日葉保育園 大倉山園さま

 明日葉保育園大倉山園さまはSDGsに関しても非常に熱心に取り組まれていらっしゃいます。セミナーでは、水汲み体験や残飯のコンポスト化など年間を通じた様々な活動と、SDGs発表会を実施された様子をお伝えしました。また、原田先生には、こどもたちがSDGsのまなびに熱中するためのポイントをお伺いしました。

 原田先生のお話しを一部抜粋させていただきますと、ポイントは、こどもたちの個性にあった取組を考えること。 先生からこどもたちに対する”問い”と”続けること”。あくまで楽しく遊びの中に、身近に感じてもらうこと。だそうです。

 こどもたちが興味を持って楽しく続けられ、日常の中で関心・考えを引き出すことが目的なので、SDGsを特別視した活動をするわけではないとのこと。ですから、興味のきっかけや背景づくり、なぜこうなったの?どういう仕組み?などの問いが大切なんだそうです。


●かいけ心正こども園 さま

 かいけ心生こども園さまは、SDGs促進活動として「じぶんごとぷろじぇくと」というプロジェクトを推進されています。自分の意識から変えていこう、という目的で名付けられ、こどもたちは様々な観点で体験することで、自分の問題だと捉えることができます。例えば海にまつわる問題では、海岸清掃やマイクロプラ(海洋塵)を使ったキーホルダーづくり、魚の解体見学や海に対する講演などを聞き、実感をもって学ぶことができたそうです。また、秋田理事長と長谷川先生に、先生たちがSDGsに慣れ親しみ、熱中するポイントをお伺いしました。

 先生方のお話を一部抜粋させていただきますと、ポイントは、現場の負担が小さいことから始め、ハードルを下げること。こどもたちと一緒に楽しむ、こどもたちの熱量に引っ張ってもらうこと。だそうです。

 忙しい現場では新しいことを始めるのは大変ですが、とても小さなことから始めるうちに、こどもたちが保護者や先生たちに教えてくれるようになり、自然と熱心になっていったとのことです。



■まとめ

 SDGs達成にむけて取り組んでいらっしゃる園の先生方のお話を踏まえ、園でのSDGs活動ステップとしてまとめました。


セミナーでは各ステップごとにやり方を説明しましたが、要点はこちら。園によってできることは異なると思いますが、ぜひ参考にしてみてください。


・大きなゴールを捉えるが、とっかかりやすそうなテーマから小さく始めればよい

・難しく考えず、先生の負担を少なく、こども達の個性を鑑みた馴染みやすそうな内容に

・こども達や先生の反応を見ながら、振り返り、反復して考えを深める



■SDGsプログラム「ちきゅうふれんず」

 各園個性豊かな取り組みをご紹介いたしましたが、やはりすべてのテーマを網羅したり、継続的に活動を続けるのは難しい…というお声もかなりの数、頂戴しております。そのような先生方もサポートできればと、幼稚園・保育園のSDGsへの取り組みを支援する活動の一環として、弊社は「ちきゅうふれんず」をご提供しております。本セミナーでご紹介した日本園さまも2022年度版を導入してくださっていて、各テーマの説明動画などをご活用いただいています。

 ちきゅうフレンズ2023として、今年度版より大幅リニューアルしております。こどもたちが楽しく世界を学び身近に感じることで、自分で考え関心を持ち続けるをことを目的としたプログラムです。ご興味のある方はぜひ、お問い合わせください!


 

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