【海外の教育現場レポート】ニュージーランドのテ・ファリキ幼児教育 ~第一弾~


 

こどもたちの意思を尊重するニュージーランドのテ・ファリキ幼児教育。日本でも注目が高まる一方、現場での実践を知る機会は多くありません。シンクアロットは昨年、ニュージーランドからライブ中継し、テ・ファリキについて理解を深める無料オンラインセミナーを実施しました。 本セミナーではニュージーランドの現場から、ラーニングストーリーなど実際に使っているものを紹介しつつ、現場での実践をお伝えしました。日本の園でも取り入れられるポイントが詰まった、実践的な内容をお話ししただき好評をいただきましたので、その概要を2回に分けてお伝えいたします。

 

 

■目次

・セミナー実施概要

・テ・ファリキとは

・主な進め方

・テ・ファリキのツール

・各プロセスで大事なこと

 

【セミナー実施概要】

 ニュージ―ランドの現地園で先生をされている植竹笑子先生、現地で子育てされている西田涼子さんをお招きしてライブ中継しましたシンクアロット特別企画の無料オンラインセミナーです。

実施日:  2021年9月3日(金)13:00~14:00

内容:

 (レポート第一弾)テ・ファリキとは、テ・ファリキのプロセス、各プロセスのポイント

 (レポート第二弾)各プロセスの具体例、テーブルセットのコツ、Q&A

ゲスト:

 ●植竹笑子Uetake Emiko 先生 (Fernside Preschool Teacher)

 ●西田涼子Nishida Ryko さん (ニュージーランドコーディネーター/現地で子育て中ママ)



●テ・ファリキとは

 テ・ファリキはマオリ語(ニュージーランドの先住民の言葉)で交互に編むこと、編んだ敷物のことであり、 1996年からスタートしたニュージーランドのナショナルカリキュラム(教育・保育指針のこと)を指します。
















出所:ELS Te-Whariki Early Childhood Curriculum


カリキュラムの主な特徴として特に日本の幼稚園・保育園との違いをあげると、下記の3つがあります。

• 「○才までに○○ができるように」といった画一的な指標はなく、子どもの社会的・文化的な学びや、さまざまな人々との関わりを重視

• 集団活動を強制せず、一人ひとりのこどもの意思を尊重する

• 自由に遊ぶことを重要視。一人ひとりのこどもにあった、さまざまな遊びの空間を提供し、思いっきり遊びながら「自分で考えていくプロセス」を習得させる



●テ・ファリキ式の主な進め方

 これが主なテ・ファリキのプロセスといわれるものです。



















 まずは観察(Notice)からはじまり、こどもたちの行動関心を把握します。次に、学習状況の掘り下げ(Recognize)といって、何が起こっているのか、その学習状況を掘り下げます。そのうえで、こどもひとりひとりのゴール、そしてそれを達成するためのプランをつくります(Strategy)。そして、その活動の評価(Revisit,Evaluation)、として、最初に設定したプランとの比較や、期間における成長を確認します。最後にまた観察を行い、これまでの状況をふまえて同じようなゴールを設定するのか、あるいは、少し違う方向感のゴールを設定するのかを考えます。

 これらが大体、標準的には3か月程度で1回転し、こどもひとりひとりの個性を大切にしながら、成長をはかることが、テ・ファリキの主だったプロセスです。


●テ・ファリキのツール

 テ・ファリキを実現する主な手段に下記の3つがあり、それぞれテ・ファリキの主要なプロセスの中で活用されます。

① ラーニング(学習)ストラテジー/プラン

② ラーニングストーリー

③ アクティビティ(日本ではテーブルセットと呼ばれます)



















 アクティビティ、日本でいうテーブルセットというのは、日々のこどもの成長のために使うものです。アクティビティセットなどをもとに観察し、ラーニングストーリーという、観察・その掘り下げの記録として利用します。

それらをもとに、ゴールづくり・評価を行うのが、ラーニングストラテジー/プラン(学習計画)というフォーマットを活用します。



●各プロセスで大事なこと

観察/掘り下げ

 観察と掘り下げで重要な点は2つあります。一つは、まず園の中での活動として、こどもを1:1でよく観察することです。特に、何度も頻繁に場所を選ばずに行う行動には、何でこういうことをするのだろうという疑問を持つことが重要です。

 これだけでは不十分で、次に、家庭、つまり、保護者に対して、それが何でおこっているのか、問いかけを行います。家庭での変化や、行動が、そのこどもの行動や関心の根っこにある可能性がありますので、表層的でなく、根本的になぜそういった行為に関心を持つのかを解き明かすことが重要です。

 一言で言うと、こども一人ひとりを外から、中から、理解しようとする姿勢が何より重要ということです。これは、日本の園のみなさまも、しっかりやっていらっしゃる部分ではないでしょうか。


ゴール設定/学習プランづくり

 一般的に、ゴール、と聞くと担任の先生だけで、一方的に決めていくイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。例えば、もっとたくさんのことばが話せるように、表現できるように、ということをゴールにするとすれば、まずは担任の先生がNotice Recognizeによってそれを見出し、他の先生の意見も求めます。

 さらには、保護者も巻き込み、家庭の状況も踏まえて、それが適切なゴールなのかを話し合います

そして、実は、こども自身の声を聴くことも大切です。こども自身を含む、こどもを取り巻く人たちすべての人たちの思いが一致すれば、それはとても良いゴールと言えます。


評価

 評価は毎日の遊びの中で行います。

 評価、と聞くとどうしても、小学校でいう成績表なようなものをイメージされると思いますがそうではありません。成績表は、すでに項目がいくつかセットされていて、それらに対して、できる、できないということが判断されます。そして、もちろんできれば良し、できなければ、悪しとされ、その差異を埋めるためにどうするの?ということが基本スタンスです。これは、Assessment of leaning、つまり学んだことの評価、と考えることができます。

 テ・ファリキでは、Assessment for Learning、つまり、次のまなびのための評価であり、そのときに、できた、できなかった、ということはあまり重要ではありません。そもそも、ゴール自体が決まったものではなく、観察によって、こどもの関心の向く方向性のものに設定されています。

 ただ、一方で、設定したゴールと、状況が異なるとすれば、Strategyが違ったのか、こどもの関心が変わったのか、アクティビティが足りなかったのか、など、多面的に原因は検討します。

 そのうえで、何か違えば、ゴールを変えたり、修正したりと、こどもがのびのび成長できる方向・方法をみんなでかんがえます。また、こういった理由から、成績表のような項目ごとに良し悪しを判断する記録はフィットしませんので、ラーニングストーリーのような、ストーリーとして、こどもの活動を見て、判断することが重要になります。



★実践レポート第二弾では、テ・ファリキ実践の具体例や実際のテーブルセット、園目線、保護者目線でのQ&Aをご紹介します!


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